森美術館で開催中の、『ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築』に行ってきました。
入場するとパアッと広がる空と街の絶景。ここでの展示会は景色もすばらしいので、大好きです。
『ヘザウィック・スタジオ展』は、とにかくユニークデザイン。ひとつの濃密なパーツの精密な集合体からなる建築物がおもしろかったです。それから着想から始まり、いくつもの試作を経て、実現させるまでの熱量に圧倒される展示でした。展覧会のセクションは6つあり、ここでは私が印象に残った展示物をピックアップしていきます。世界の誰かの参考になれば幸いです。
●section1「ひとつになる」
《上海万博英国館》
現実味のないCGのような建物。遠くで見るとふわふわの綿のようなぼんやりした線でできているように見えるのは、ひとつひとつの杖状のパーツが放射状に生えている形で形成されていました。
内部では杖状のいろんな種が埋め込まれたパーツを見ることができたようです。それはとても精密に並んでいて、外観を映したドローン映像を見てると、角度によってパーツの生え際がチラチラと変わって見える現象が、おもしろかったです。
●section2「みんなとつながる」
《シンガポール南洋理工大学》
スズメバチの巣のような、地層の断面図のような、曲げわっぱのお弁当箱のような独特な外観です。学校なのでたくさんの生徒さんが集合するという意味では蜂の巣が近いかもしれないです。
セクション2では「みんなとつながる」テーマがあり、どの階からも同じ中央の吹き抜けが見られて、中央はみんなとつながるハブ的な作りだというのがわかります。それにしてもこの不規則に揃っている曲線が上から見るととても美しい構造で、美術館やオペラハウスをも思わせる芸術性の高さも感じました。
《グーグル・ベイ・ビュー》
なんて楽しそうなGoogleの職場!
●section3「彫刻的空間を体感する」
《バンド金融センター》
上海にある建物。動画展示だけだったので写真はないのですが、何層も重なった金属でできた竹カーテンが、建物の周りをぐるぐる動く、この日一番驚いた建築物。ロビーにいると外側の動く明かりの変化が同じ空間にいながら浮遊してるかのような錯覚になり、おもしろいです。海外はすごいですね!
参考ページ→フォスター アンド パートナーズとヘザウィック・スタジオが設計した〈外灘金融センター〉The Bund Finance Center, designed by Foster + Partners and Heatherwick Studio |CULTURE|TECTURE MAG(テクチャーマガジン)
《海南舞台芸術センター》
ぱっと見、フジツボみたいな形が独特ですが、火山の風景とオペラの衣装、色彩、動きから着想を得たそうです。芸術センターらしくとても印象に強く残る建物です。現在も施工中。
《ヴェッセル》
ニューヨークにある、上まで階段で登れる展望施設。映画に出てきそうな建築物です。インドの階段井戸に着想得たそうですが、こういうかっこいい形になる発想なんですね。
●section4「都市空間で自然を感じる」
《リトル・アイランド》
なにかの足にも見えてギョッとしてしまった、これは桟橋を備えた公園らしいです。杭のようなプランターがいくつも並び、上には植物が植えられていて、水上公園になっています。プランターのカーブが生々しくて、テーマである「自然とのつながり」は成功していると思います。
●section5「記憶を未来へつなげる」
《ツァイツ・アフリカ現代美術館》
トウモロコシのサイロの中央部を丸く切り取った加工で、曲線は生々しく生き物のような存在感でおもしろい立体。断面がこんなに主張するものなのかと驚きました。段ボールのモデルがわかりやすかったです。
《パーナム・ハウス》
英国の建築様式ジャコビアン様式の、火災で破損した部分の修復の依頼を受けたもの。9mの窓が中心を起点に開閉できる仕組み。全部閉じていると蜘蛛の巣みたいな模様で、窓が開くと煌びやか。窓を開くのか開けるのか、はたまたずらすのか、概念が変わります。ものすごい発想!
《ボンベイ・サファイア蒸留所》
独特なカーブの建物がジンメーカーの蒸留所。ジンには、熱帯性植物と地中海性植物を合わせた風味がレシピでつ使われていて、それぞれの種を栽培する気候条件に合わせた温室に設計されているんだそう。こちらは地域全体も再構築したそうです。
《麻布台ヒルズ/低層部》
『ヘザウィック・スタジオ展』見たいなと思った動機は、現在建築中の麻布台ヒルズ低層部の形がおもしろいなと思ったので。ここは、展示会場の東京シティビューから、現在建築中の実在の物件を見下ろすことができて、すばらしいシチュエーションで見ることができました。
●section6「遊ぶ、使う」
《スパン》
数年前、テレビで見たスパンというイスがおもしろそうで覚えていたのですが、なんと展示最後に座れるコーナーがあって、座ってみることができました。
グルングルン回って謎の遠心力が気持ちよいものでした。引力に身を任せる浮遊感が良いのかなと。絶対倒れない不思議イスでした。
おまけ。
《寺院》
鹿児島を見下ろす山の中腹に建てられる仏教寺院の構想。布地を置いたようなたわみの形がもはや建物に見えません! そして2001年時点で、未着工でした。
大胆な発想から実現する熱量がとにかく印象強く残った展示でした。6月までやっているようですので、興味のある方はぜひに。
『ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築』
期間:2023.3.17(金)~ 6.4(日)
休館:会期中無休
時間:10:00~22:00(最終入館 21:00)
料金:
[平日]一般 2,000円(1,800円)/学生(高校・大学生)1,400円(1,300円)/子供(4歳~中学生)800円(700円)/シニア(65歳以上)1,700円(1,500円)
[土・日・休日]一般 2,200円(2,000円)/学生(高校・大学生)1,500円(1,400円)/子供(4歳~中学生)900円(800円)/シニア(65歳以上)1,900円(1,700円)
場所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー
東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)
世界中を旅してきたかのような展示鑑賞の後は、甘いもの補給。アマンドの店内限定の六本木シューおいしいです。
23.04.16