カエルニッキ

ド・ザイナー。

再発見! フドイナザーロフ ゆかいで切ない夢の旅『海を待ちながら』

中央アジアが生んだ早世の天才映画監督バフティヤル・フドイナザーロフ。今世界が再注目する、やさしさとユーモアにあふれたファンタジックな作品群を一挙公開!

予告を見ておもしろそうだなと思っていたユーロスペースで開催中の再発見! フドイナザーロフ ゆかいで切ない夢の旅に行ってきました。


『ルナ・パパ』を見たかったのですが、タイミングが合わず、監督作品最後の作品である『海を待ちながら』を観てきました。感想にネタバレあるかもしれませんので、未見の方はご注意です。

バフティヤル・フドイナザーロフ監督という人を全然知らなかったのですが、中央アジアタジキスタン共和国出身と聞いて、俄然見たくなったのでした。最近ハリウッド映画見過ぎているということもあるのですが、中央アジアのことをよく知らないので、どんな世界を作った人なのか興味が出てきたのです。

監督デビューが26歳、長編を6本作り49歳の若さで急逝しています。映画は絶えない戦時下であってもそこに住む人々には日常があり、人間模様があり、物語が見る人たちに愛されてきた作品だったそうです。この度、ユーロスペースで公開されるいい機会に行けて良かったなと思います。

『海を待ちながら』は、帰宅してからちょっと調べたのですが、アラル海のことを知っておいた方がよりわかりやすいかなと思いました。日本の東北地方ぐらいの大きさがあった湖が、ソ連時代の治水工事の影響で福島県ぐらいに小さくなってしまったそうです。
参考記事→干上がったアラル海のいま 環境破壊、報いの現場を歩く

物語は漁業が盛んな港町が、数年後、水が干上がってしまい、砂漠の地で暮らす人々がいて、砂の上で海を求めて船を動かす船長のお話です。

フドイナザーロフ最後の作品。船長マラットはアラル海を航海中に大嵐に遭遇し、妻や仲間を失った。心に傷を負った彼はある決意を胸に、今では干上がってしまった海に戻り、荒野に佇む自分の船と対面する。そして船を引きずって水のない海を横断する無謀な旅に出る。贖罪を求め彷徨うマラットはどこに行き着くのか。半世紀で10分の1にまで干上がった、カザフスタンウズベキスタンにまたがる大湖・アラル海を舞台に、監督の中央アジア人としての思いが投影された壮大な夢の物語。(公式よりコピペ)

砂漠に大きな漁船が点在していたアラル海は、一見どこの惑星かなと思うほど異世界でした。日本にいたらおおよそ想像つかない情景です。お勤めを終え、帰郷したマラット船長に、身内を失った故郷の人たちは強い怒りを持っていて、冒頭から見ていてハラハラ。

そんななかでも男女の関係は、激しく情熱的なのがすごく印象的でした。

傷ついたり傷つけたり、ただ生きている希望ない荒野で、贖罪のために淡々と船を移動させるマラット船長。ハッピーエンドはないけれど、希望が垣間見える終わりでちょっと救われた気がします。どうか夢オチになりませんようにと祈るばかりでした。

23.06.18