カエルニッキ

ド・ザイナー。

『生きのびるために(ブレッドウィナー)』字幕版


アイルランドのアニメーションスタジオ、カートゥーンサルーンのノラ・トゥーミー監督による2017年のアニメーション映画『ブレッドウィナー』字幕版を観ました。感想にネタバレあるかもしれませんので、未見の方はご注意です。

この映画は2001年のタリバン政権下のアフガニスタン、カブールが舞台。11歳の少女パヴァーナが、父がタリバンに捕まり(完全に無実)、残された家族のために男の子になって稼ぎ手(ブレッドウィナー)になるお話。

つらい……。これはつらい映画でした。

まだまだ小さい少女が、家族が生きていくため、捕まった父親を助けるため、自分がやらなければ、という強さが健気でとても悲しく辛いです。初めて男の子になってひとりで街に出たときの、女じゃない自分への対応に驚く一変した世界。全く新しい世界に驚くパヴァーナがとても愛おしい。ここではとにかく女性が生きにくい社会を、繊細な心理描写で表しています。

そして、男の子であってもバイトするのもひと苦労するのですが、街は、時折上空を戦闘機が飛び、電柱にはよれよれの電線に何か引っかかっていたり、住宅の壁には銃痕が。街自体が荒んでるように見えるけれど、もはやこれが普通なのかと思ったり。

日本では考えられない恐ろしい話が盛り沢山だけど、パヴァーナのお話の物語の世界は、一変して色使いがとても美しく華やかで輝いています。こういう色あいのアニメーションのセンスはあまり日本のアニメでは見かけない気がします。

いつしか荒んだ現実と色鮮やかな物語が交差する時、握り拳にギュッと力が入っている自分がいました。

監督はとてもよく取材をされたそうで、パヴァーナのような少女がたくさんいることを残していきたい映画でもあるようです。まず知ることで、知れてよかった映画のひとつになりました。先日見た『トゥルーノース』もそうですが、アニメーションというクッションのおかげで、リアルでは目を背けたくなるようなことも、しっかり見て知ることができる映画だと思います。


表題タイトルですが、公式サイトでは『ブレッドウィナー』ですが、Netflixでは『生きのびるために(ブレッドウィナー)』とされていて、Netflixで見たので、タイトルは合わせました。

21.09.12