知り合いからたまたまチケットをもらって、『ぐるりのこと』を観てきました。評判はいいとは聞いていた映画でしたが、はたしてそれは想像以上でした。
90年代初頭から21世紀へ時代が激変した10年。実際に起きたさまざまな社会的事件を背景に、1組の夫婦の時の流れを紡ぎ出した物語。
共感することが多く、リアリティのある映画でした。役者2人の実力だと思いますが夫婦の妙に生々しいやりとりに、最初はちょっと引いたぐらい。でも、同じような経験をした人なら、相当心をえぐられると思います。そして最後には温かいなにかが心に残ります。
初めての子供の死がきっかけで、鬱状態になる妻を、じっと支え包み込む夫。ある夜、ちょっとしたきっかけで妻が発狂するのだけれど、それでも切り捨てなかった夫の大きな包容力に感動しました。
反面、法定画家である夫の目に映し出される、さまざまな事件の数々。あえて説明も言葉もなく、場面だけで何かを思わせる、夫の心情の表し方が高度な映画だと思う。
金の屏風には一見、不似合いな服装の夫婦の写真。でもこれは映画を観たあとに、すべてを表したものであるということがわかります。30〜40代の夫婦のシト、もしくは夫婦だったシトたちにオススメしちゃいます。
個人的に妻が若冲のような、壁画を描き始める部分が最高に好き。やはり何かに熱中しているときの人間の輝きはいいものです。