カエルニッキ

ド・ザイナー。

ビールビル 08:08

6月29日のことです。前の会社で一緒だったチホに誘われて、ASAHI ART FESTIVAL 2003すみだ川左岸カルチャーツアーに参加してきました。観光バスで下町の職人さんの仕事場巡るツアーで、ものすんごくオモチロかったでつ。こうゆうバスで案内されるのってずっと憧れてて(笑)、予想通りバスの中もラクチンでたのちかったー。それではカエルが観てきたものを順番にご案内しまつ。でも9ヶ所ぐらいの感想を述べているので、とても長いです。全部読めたらお疲れさまです。

【一日のスケジュール】
浅草アサヒビールビル前集合
1.小林人形資料館(日本人形)
2.彩りガラス工房(江戸切子
  洋食 煉瓦亭(昼食)
  深川芭蕉庵近辺散歩
3.美弥好 更紗の世界(更紗染め)
4.磯貝べっ甲専門店(べっ甲)
5.桐屋田中(桐タンス)
6.明祥(印刷)
7.アトリエヒノデ(舞台衣装)
浅草アサヒビールビル前解散

●小林人形資料館(日本人形)
説明してくれる奥さん女学生がお金を集めて作った人形

昔から人形作りは分業が進んでいて、ここはカシラの部分を作っているそうです。すばらしく透明感のある肌色は、桐の木の粉で作った形に、カキの貝の粉をすりつぶしたものを、塗っては乾かしを何度か繰り返し、最後にはハマグリの粉で仕上げるそうです。ひとつひとつが何度も手間をかけた作りになっているので、今では作業効率も悪いし、値段も高いそうで、あまり売れないそうです。今回はご主人が入院されているとのことで、奥様がご案内してくださいました。

展示室には戦後の友好関係の一環で、外国の偉いシトのへ貰われていった人形たちの原形がたくさんありました。向こうで展示された様子の写真が、今度は海を渡って送られてきたそうです。

中には、特攻隊でゆく息子のために持たせたという、ほまれ人形というのがありました。人形の着物は、母親が自分の着物を壊して作ったそうでつ。それから戦時中に疎開先で母親に貰った人形を大事に抱えて眠っている少女たちの写真もありました。

この人形たちが果たした役割の重要さというのは、自分は想像つくものではないですが、ここから何かを感じ取らなければいけないと思いました。

【小林人形参考リンク】
★あらかわ日記★バックナンバー1996年12月7日(土)には、ご主人のお話されている写真が掲載されています。


彩り硝子工芸江戸切子
削っている様子完成品

ガラスの器の表面を削って模様を付けていく職人さんです。ダイヤモンドが入っている金属を回転させて、そこにガラスの器をあてて起用に動かすと、見る見るうちに模様が付いていきました。「馬だの、桜だの、いろいろ注文くださるんですけどね、絵心がね、なくてね、苦労しますよ」と言いながらもご主人は、起用に鮎を掘っていました。中には人の顔なんて言う注文もあったりするそうですが、そのつど考えて作りあげているようです。「せっかくお客さんが言ってくださってるからね、こっちもね、やってみるかって気になりますからね。」
見学者の誰かが「この削っている時にガラスの破片は目に入らないんですか」と聞いたところ「あ、入ってますよ。こすったらダメなんでね。でもそうゆう目をカバーするものを付けると、集中できないんでね」と答えてました。先代は目玉のはしに金属の破片が飛んで、刺さったままほっといたら、そこから白目が錆びたらしいです。「でも、仕事は続けてましたけどね」とご主人。

職人の力強い言葉に、ホントに自分が恥ずかしくなりました。寒いだの暑いだの、肩凝りだの目が疲れただの言ってる自分がです。

江戸切子参考リンク】
東京都指定伝統工芸 江戸切子

ここでお昼ご飯です。洋食屋さんで知られるらしい煉瓦亭で、洋食弁当をいただきました。ふわふわオムレツと、ピリッとした漬物が美味しかったです。

食後はおさんぽ。汗っかきの歴史先生の久染先生のあとに付いて行き、忠臣蔵の四十七士が、吉良邸討ち入りのあとに通ったという道を通り、松尾芭蕉銅像がある広場で、芭蕉のお話しを聞きました。この日は気温30度を超える晴天で、隅田川からの風が心地よくふいて爽快でした。
松尾芭蕉参考リンク】
松尾蕉庵 深川(深川にある芭蕉会館、芭蕉庵、銅像が見られます)


更紗の世界(更紗染め)
型紙の説明まるばけステキなおみやげ

一反の布が往復するぐらいの長い板の上で、切り絵のように模様の入った型紙を置き、その上からはけで色を染めて行くものです。使うはけは、シカの毛で丸い形をしているので丸ばけというそうです。シカの柔らかくて軽い毛の根元には、砂を敷き詰めて固定しているのでこれを逆さまにすると、砂が落ちてしまいます。更紗染は、このはけの重さに任せて色を乗せていくものらしく、やる人によって選ぶ色も、色の濃さも違ってくるそうです。

型紙には、ホシとよばれる印が二ヶ所紙の端にあり、その点を合わせて紙を置き、パターンのように繰り返し布に模様をつなげていきます。このホシの見当がずれると、全部あとの模様がずれてしまう。作業も昼間の自然光のみ、夜の電灯ではまた視点が変わってしまうらしく、まるっきり分業できない一人きりの作業です。

足下は土間になっており、実は適度な湿気を含んでいて何かと都合がいいようです。以前機会がありコンクリートの床でやった時に、乾燥が早くてダメだったとか。結局戦後の当時からずっと土間を愛用しているのです。修学旅行の学生さんが、土間という言葉自体知らずに、何で下がでこぼこなのかと質問されるそうです。

残念なことに、この更紗染も今では需要が少なく生活がたたないのが現状で、後を継ぐ人もいないようです。ツアー参加者の女性で、更紗染のスカートを召している方がいらっしゃいました。せっかく良いものを作っているのに、それを知ったら購入する人は確実にいるのに、知られてないで消えていくのはとても残念な話です。そうゆうのを外国に持って行くような人がいれば、またこうゆう産業も持ちこたえるのではないかと、誰かが言ってました。

帰りにお土産でティッシュケースをいただきました。どうゆう工程で作られたか、知ったあとに見る染めた布地が、とても愛おしくなりました。


磯貝べっ甲専門店(べっ甲)
はがれた甲羅高級商品

べっ甲というのは亀の甲羅から取れるというのも知らずに、ツアーに参加しておりました。これだったら、若い頃コームとか、持っていたと思うのでつが、値段の桁が2つぐらい違いました。

べっ甲には大きい亀の甲羅を使うそうです。水に浸けておくと、薄皮のようにぺらぺらのがはがれてきて、それを圧着して加工するそうでつ。この時に、黄色い部分が多いと、値段が張るそうです。


桐屋田中(桐タンス)
展示物

桐の木の特徴。軽い・杉が80年に対し、桐は20年で育つ・収縮率が少ないのですき間なく作ることができる・熱伝導率が低いので火災に強い・湿度も一定に保てる・虫を寄せ付けない成分がある・腐りにくい。などなど。音響性にも優れているらしく、楽器にも使われているようです。

展示場は、販売しているものもあり、水はけが良いというまな板(1500円)を購入しました。すごく軽くて、そんなに目玉が飛び出るほど高くはなかったです。


明祥(印刷工場)
すごい音がします

今までは古い工芸品を見てきましたが、ここではハイテクなシステムをご覧いただきます。と案内されたのが、印刷工場でした。日曜日なので、デザインの制作現場は見られませんが、工場の機械でどのように印刷がされているのか、見ることが出来ました。早い早い! 見る見るうちにチラシが積まれて行きます。

印刷されたものをルーペという虫眼鏡のようなレンズを通して、印刷のインクが点の集まりで(網点といいます)それが文字や、写真の絵に見せているというのを確認しました。

帰り際、一人の奥さんが「チラシ、今度からすぐ捨てずに見てみようかしら」と言ってました。そうですね、ハイテクな技術でも人の手を通して作られているものだから、作った人たちも浮かばれますよ。と、心の中で思いました。


アトリエヒノデ(舞台衣装)
桜井さんこの衣装

さて、最後はドーンと華やかな舞台衣装の工房を見学させていただきました。まずアトリエ代表である衣装作家の桜井久美子さんのお話を伺いました。スーパー歌舞伎や、紅白の小林幸子の衣装を手がけたという方です。生き生きとした快活な話し方で、でしゃばらずに、プロ意識がつよく、どんどん引き込まれる魅力的な人でした。

「男も、女も死ぬまでおしゃれしないとね」「親だけは大事にした方が良いですよ」などと、当たり前のような言葉でも、桜井さんが言うと本当に説得力があるから不思議です。「普段は公開しないのですが、今回は特別です。端切れもTシャツもあげちゃいます」「ここにある衣装は見て触ってもだいじょぶですから、どんどん見て触ってってください」何という太っ腹。大物の大物たるゆえんを目の当たりにしました。

知らないうちにアサヒのスーパードライが卓上へ並んでました。どうやらここで飲んでいいらしいです。そう言えば、今回のツアーがアサヒアートフェスティバルだった。気温30度を超えたこの日のビールはうま過ぎました。桜井さんを囲み、いろいろな舞台の逸話を聞きながら、最後の見学場所が終わろうとしてました。

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なんと実に充実した一日だったではないでしょうか。一日引率してくれたティアラこうとうの森さん、留学を控えたバイトさん。さりげなく通る道にも歴史が宿っているのを教えてくれた深川江戸資料館の歴史の久染先生。大変お世話になりました。声をかけてくれたチホにも大感謝です。

つごいのたくさんたくさん手に入れました。職人さんからはパワーをいただきました。このすばらしいきっかけを、なんとか自分の中でうまく活かせるようになりたいです。

とか、真剣に思いつつも、解散後は浅草松坂屋のビアガーデンへまっしぐら。ビルの影に沈んで行く夕日を見ながら、そよ風に吹かれて飲むビールはまた格別でした。

【参考リンク】
小さな博物館一覧