カエルニッキ

ド・ザイナー。

『THE GREY 凍える太陽』


(C) 2011 The Grey Film Holdings, LLC.
製作リドリー・スコット、製作総指揮トニー・スコット、『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』のジョー・カーナハン監督『THE GREY 凍える太陽』を観てきました。上映開始15分で飛行機墜落という予告を見て、パニック映画からの人間模様を描いたものかなーと思っていたのですが、みるみる違いました。以下ネタバレあり。

あの予告で、ある程度ハリウッド映画を観ている人なら、本編冒頭の“ならず者たちの集まり”の説明で、もうエイリアン退治よろしく豪傑共が集められたかのようなそんなエンターテインメントを勝手に期待してしまうところですが、いい意味で期待を裏切られました。

墜落で生き残った7人が、生き残るためにアラスカの大雪原を移動するのですが、そこに立ちはだかる極寒-20度のアラスカの大雪原と、狼の群れ。狼は巣穴に近づけば、何人たりとも攻撃をしてくる。移動に疲れて眠りにつき、優しい思い出に浸ってるその突然を襲ってくる容赦ない狼。エンターテインメント性はなく、見ながらにして疲労してくるような映画でした。

墜落後助かった7人の中に狼のスナイパーがいて、この人が主人公・オットウェイなのだけど、狼に関しての知識があり、リーダーシップを取りながら何とか狼から逃げ、助かる方法を画作していきます。

何頭も射殺してきたであろうオットウェイが、まだ息のある狼に最後にしてあげることは、横たわった腹部に息絶えるまで優しく手を当てていること。それを墜落後生存確認はできたものの、大量出血で瀕死の状態の乗客にも同じようなことをするのが印象的でした。「身体をゆだねて。そうすれば全身が暖かくなる。楽しいことを思い出して。それだけを考えよう。」そうして、瀕死だった乗客は穏やかな顔で逝くのです。

自然の法則に従うオットウェイですが、実は飛行機にのる前、失意の中で自殺未遂をしていて、生き残るために生きる墜落後の状況がなんとも皮肉。進むに連れて脱落者は続き、難易度が上がり、オットウェイの皮肉は最後の最後に最も最悪な状況で待っているのですが……。エンドロール後もお見逃しなく!

狼の襲い方や、崖から樹の枝に飛び上がるところとか、ちょっとリアリティを感じられない部分もあれば、生きるかあきらめるか精神的に追い詰められるし、そうかと思えば大雪原に響く狼の遠吠えと、皮肉にもマッチする音楽の音色の優しいこと。自然は美しい。反面容赦しない。精神を揺さぶられる生きる本能を訴えた映画だと思います。