カエルニッキ

ド・ザイナー。

『シェイプ・オブ・ウォーター』字幕版


ギレルモ・デル・トロ監督最新作『シェイプ・オブ・ウォーター』を観てきました。感想にネタバレきっかけが含まれるかもしれませんのでご注意です。

こういう本来でいうピュアな話大好き! 役者も曲も歌も強者も弱者も建物も時代の味があって良かった!

1962年のソ連との冷戦下にあるアメリカ。この時代、日本人にしてみれば根底にある差別思想はちょっとわかりにくいところではありますが、時代の象徴である、ソ連対アメリカ、支配する強い立場と、声なき弱者の構図が、はっきりとしていてわかりやすく、メッセージ性高かったです。

デルトロ監督が長年かけて構想した映画とのこと。あの半魚人、初めて見たときはクリーチャー得意のデルトロ監督ならではのリアルさで、水面から顔を出したときギョッとしたものですが、そのうち慣れて神聖な存在に見えてしまうので不思議です。

イライザの日常も良かった。映画館の上に借りているお部屋の味わい深さと、隣人の絵描きおじさんと猫たち。毎日の出勤前のゆで卵作成時間と並行して行われる自慰行為に、おお〜とおもわず見入ってしまいます。イライザは声が出ないだけでおとなしく見えているけれども、生命力にあふれている一面だなと思いました。むしろ半魚人によって情熱的な部分が浮き出てきましたね。

そんなイライザと半魚人の関係は言葉がない分、急速に親密になって行きます。平たく恋愛がテーマの映画だとは思いますが、お互い求め合うまであっさりと描かれています。お部屋を水浸しにするシーンは好きだなあ!

ソ連のスパイともほとんど言葉が交わされることがなかったにもかかわらず、意思の疎通ができてて、ハラハラしながら見せてくれました。ここでは誰が敵なのかわかりやすかった描かれ方でした。

イライザ役は、一言も喋らない女優さんサリー・ホーキンスでしたが、途中モノクロの幻想シーンでは、美声をご披露していて、声を聞けて良かったかな(本人の歌声かはわかりませんが)。このシーンが死後のシーンではありませんようにと、祈っておりました。デルトロ監督ならありうるので……。

友人役ゼルダで出ていた黒人女性のオクタヴィア・スペンサーは、ちょっと前に公開されていた『ドリーム』の3人のうちの一人ドロシー・ヴォーン役で出ていて、時代も1961年のNASAということで、違うけど近いものを感じました。

半魚人苦手じゃなければ、当時のベタなアメリカンの雰囲気がよく表現されているのでオススメです。

追記:『シェイプ・オブ・ウォーター』アカデミー作品賞、監督賞、美術賞、作曲賞おめでとうございます! お金を出す代わりに口も出されるのを避けて、半分自腹を切って作った思い入れのある作品。受賞することで広く認められる場所で名を連ねたことで、今後もデルトロ監督にいい空気が回りますよう祈ってます!

18.03.05