カエルニッキ

ド・ザイナー。

『ジョルジョ・デ・キリコ −変遷と回帰−』


汐留ミュージアムで開催中の、『ジョルジョ・デ・キリコ −変遷と回帰−』に行ってきました。最終日に滑り込みで行けました。

形而上絵画(けいじじょうかいが)のはじまりであるキリコの絵を堪能してきました。形而上絵画とか普段使わない難しい言葉ですが、ひとことで言うと“不安を感じる絵”とされています。遠近法の焦点がずれていたり、謎の静物が置かれてあったり、くっきりとした長い影があるのに真昼間だったりと、矛盾が不安を仰ぐような状態の絵が特徴的です。

シュルレアリスムの走りとしても有名なキリコですが、本人いわく、自分の絵を理解できるのはほんの2,3人ぐらいと言っていたようです。意図は不明らしいですが作画に違った制作年を入れていたり、結構な毒舌としても知られていたらしく、内面に想像できないなにかとても厳しいものを抱えていたのかなあと、勝手に思っています。

興味深かったのは、ニーチェの「神は死んだ」という言葉で、孤独で戦う思想のもとに絵を描き始めたということ。トリノにいたとき、装飾の少ない建築の構造都市が、作風にまんま出ていて、すごい影響力があったのだなあと思いました。

不思議で不安を感じるけれど、何故か目が行ってしまう。そんな惹きつける魅力のあるキリコの絵は、中学の時美術の先生の影響で好きになりました。美術の教科書に載っていた有名な絵、「街の神秘と憂鬱」は、キリコがお父さんに怒られるのを怖がっていて逃げようとしている絵、と教えてもらい、奥の長い影は起こったお父さんだと。今となっては冗談だったのか本当だったのかわかりませんが、不安をかきたてるその絵に魅了されたものです。ちなみに今回の展示会では「街の神秘と憂鬱」の展示はなかったです。(個人蔵のため?)