カエルニッキ

ド・ザイナー。

『ヒミズ』


(C) 2011「ヒミズ」フィルムパートナーズ
古谷実原作、園子温監督の『ヒミズ』を観てきました。重くて濃厚! しかし打撃は大きいけれど、観て良かった。


ちょこっとあらすじ。正確な時期は詳しく語られないけれど、場所は震災以降のとある茨城にあるボート屋で、普通に生きていたい中学生、住田くんは母と二人暮らし。近くに被災して家族や家を失った人たちがテント生活をしていて、住民の人達は住田くんのことが大好きで尊敬していて、みんなで助けあって暮らしている風。

でも実は、大人の黒い部分が中学生の住田くんに理不尽な暴力の形で振りかかっていた。親の借金、蒸発、金融関係の取立てなど。もう一人の中学生、茶沢さんは住田くんを崇拝している女の子だけど、親が借金を抱えてしまい、娘の生命保険を目当てに首吊りの準備を部屋にしている。と、人間の心の闇や底辺を、嫌なぐらい見せられる映画です。


そして、この理不尽さが震災なんだと思った。そして殴られても蹴られてもどんな言葉を投げつけられても、暴力に屈しない住田くんが、これからの日本の国の希望の象徴なんだなと思った。それはもう絶望的なところからの出発で……。

そう思うと、冒頭から震災の後の瓦礫のシーンが出てきたとき、正直あざといなという感情になりましたが、最後の瓦礫シーンは、グワーッとすごい力の何かがこみ上げてきました。

最後にふたりで走っていくシーン、ずっと雨か曇りだった空の天気が、最後ちょっとだけ朝焼けっぽくあかるくなっていたのが良かった。

この映画は撮影直前に発生した東日本大震災を受けて、台本を大幅に変更したらしい(wikiより)。腫れ物に触るように、震災後は中止になったりしたイベント、媒体が多かったけれど、映画として真っ向から震災と取っ組み合ったこの作品は、世界にも通じる力のある一本だと思います。