カエルニッキ

ド・ザイナー。

『インセプション』

【注意】内容にネタバレがあるかも知れません。

(C) 2010 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.
『ダークナイト』の鬼才クリストファー・ノーラン監督の最新作『インセプション』を見て来ました。人の夢に入り込み情報を盗む産業スパイというのは、SFではよくあるけれど、夢の中の夢、更にその夢の中と、5段階まで潜り込み、それぞれの階層の出来事が同時進行で動くという、複雑怪奇な構想を、よくわかりやすくまとめたなあと思います。監督の頭の構造が恐ろしいです。

また時間の概念が、現実の1時間は夢の中では20時間、更に夢の夢の中では17日と、階層を潜るにつれてどんどん長くなっていく設定で、微妙に上の階層の影響を受けるタイミングは、まさに神技の映像マジック。おまけに心のトラウマを抱えたまま、またその現場に行って心理戦が加わるわけだから、常にスリリングな展開で飽きさせません。2時間28分はけして長くはありませんでした。

むしろ、最後はすごい引きで終わってしまった。もうあとは観客任せです。コブのトーテムのコマが回り終わったら、答えはひとつだけれど、映像は回転が終わるかどうかわからないところで切れています。年老いたサイトーを迎えに行った時の会話がまずナゾで、空港でコブだけになっていくところも、なぜか不自然な感じがしました。実は飛び降りた妻の方が現実世界に戻り、コブが虚無に残ったのではないかともとらえられるのでは? 見終わったあともあれやこれや思い起こしてしまい、おもしろいです。

音楽は『ダークナイト』でも一緒だった、ハンス・ジマーなんですが、印象としては『ダークナイト』よりも強いメロディの曲だなあ、と思ったら、なんとそれはエディット・ピアフの曲をスロー再生した音だったらしい。
その様子がわかる記事→『インセプション』の音楽に「植えつけられた」秘密
うわー! たしかにたしかに!
まだまだある、きっとある監督の仕掛けメッセージは、もう何度か見ないと受け取れなさそうです。